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<大型インコとの出会い>
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私は、大型インコに興味がなかった。いや、興味がない振りをしていた。何しろその頃は、コンパニオンバードという言葉すらなく、一般向けの飼育書もなかった。
大型インコというのは、動物園の鳥だった。
いつからだろう?大型インコを個人で飼う人が増え始め、コンパニオンバードという言葉が聞かれるようになり、そのうち、一般向けの飼育書が出始める頃には、AB(オールバード、鳥の雑誌)にも、大型インコを飼っている人が、ごく普通に紹介され始めた。
私と、大型インコとの出会いは、郊外にあるスーパーの中のペットショップだ。
ペットショップで、大型インコがいるのを初めて見た。タイハクの若鳥だった。
私は、おそるおそる近づく。
オカメインコやセキセイインコでさえ噛まれたらあんなに痛いのに、こんな大きなくちばしで噛まれたらどうなるんだろう?
すると、そのタイハクは、網に近寄ってきて、後ろ頭を私に差し出してきた。
「え?これって、かいてほしいの?う〜ん・・・とりあえず、くちばしは下にあるから、だいじょうぶかな?」
かいかいかい・・・ぼはぁ〜♪ ああっ、快感!
かいかいかい・・・ぼはぁ〜♪ ううっ、可愛い!
かいかいかい・・・ぼはぁ〜♪ ああっ、ど、どうすれば?
鳥飼にしか分からない、この快感!かくのを止めると、次はここ〜って差し出してくる。しかも、喉を鳴らしてるし。まるで猫みたい。
値札を見る。45万!ひゃー!半端じゃないな。
やがて、帰る時間になって、バイバイをした。
すると金網の間から目一杯足を差し出して、グーパーしてる。私の服を掴もうとしてるのか、バイバイしてるのか、ちょっと待ってと言ってるのか?
後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。
それからだ、私の大型インコ飼いたい病が始まったのは。行く先々で、ペットショップに立ち寄り、ABのバックナンバーを読み返して大型の情報を集めたり。
「大型鳥の本」も「大型インコの本」も買った。
しかし・・・調べれば調べるほど、我が家であのタイハクは無理ということが明白になるばかり。
値段がクリアされても、雄叫び、フケの点で、我が家に向かない。
もし購入するとしても、コンパニオンバードとしての専門知識を持っていて、飼育や躾のアドバイスをしてくれる店でないと、素人には無理。
今だったら、何とかなったかもしれない。飼育する人も増えたし、ホームページもたくさんある。でも、その頃は、まだまだ、大型インコなんて、珍しかったのだ。
さて、2ヶ月ほど経ったある日のこと、あのタイハクのいたスーパーに行くことが出来た。
「タイちゃんはどうしてるかな?もう、売れてしまったかな?」
タイちゃんは、まだいた。しかし、すっかり豹変していた。まるで、別の鳥のように!
私が近づくと、とさかをばっと広げ雄叫びを上げて威嚇する。その迫力に思わず後ずさったほどだ。
恐怖、悲しみ、落胆を通り越して怒りを感じた。
「餌だけやりゃーいいってもんじゃないだろう!!!」
私はケージに近寄った。今度は、金網越しに噛み付こうとする。
私は、静かに話しかけた。
「あのね、今日は、おそとは雪が降ってるんだよ。寒いんだよ。おまえ、元気にしてたかい?」
そんなとりとめもないことを話しかけてやると、怒りに燃えた瞳が、あの時のつぶらな瞳に戻って行った。
そして私の話をじっと聞いている。
帰る時間になって、タイちゃんにバイバイを言った。
すると・・・!あの時と同じように、金網の間からこれでもかというほど足を差し出して、グーパーしてる。
「おまえ・・・」
私は、思わずタイちゃんの足を握った。脛を撫でてやった。やりきれない気持ちだった。
それ以来、その店には一度も行っていない。タイちゃんの幸せを祈るばかりである。
管理人より
シップに居る鳥さんに心奪われる事は時々ありますね
劣悪な環境のお店、ひまわりしか食べさせず、手入れもまったくしないお店
言い出せばキリがなく、思い出す度に心が痛みます
できる事なら全部買い取って大きな場所で飼ってあげたいですが、それも無理…
言いようのない空しさがこみ上げてくるのは私だけではないでしょう
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